極東ロシアでアムールヒョウの個体数増加を確認!


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

極東ロシアの沿海地方南部にある「ヒョウの森国立公園」で、2014年2月~4月に実施された調査により、57頭のアムールヒョウが確認されました。この国立公園は、現在生き残っているアムールヒョウの大半が生息している重要なエリアで、2007年の調査ではその数30頭と推定されていました。今回の調査によって、ここでの保護活動が奏功し、アムールヒョウが絶滅の淵から徐々に回復していることが明らかになりました。

よみがえれ!アムールヒョウ

世界で最も北に生息するヒョウの亜種アムールヒョウ。その数はこれまで30~40頭ほどと推定され、地球上で最も絶滅の可能性が高いネコ科動物の1つとされてきました。

このアムールヒョウが生息しているのは、極東ロシアの沿海地方南部にある「ヒョウの森国立公園」と、国境を接した中国側の保護区周辺のみ。今も密猟や、生息環境である森林の劣化、分断に脅かされています。

ロシアでは、アムールヒョウの個体数調査がこれまでにも継続的に行なわれており、WWFロシアも1990年代の半ばから、その保護と調査に力をいれてきました。

2007年の調査で推定された個体数は、わずかに27~34頭。まさに絶滅の淵にあることが明らかになりました。

しかしその後、WWFなどの働きかけによって主要な生息地にある保護区が統合され、2012年に「ヒョウの森国立公園」が設立されると、保護活動もさらに強化され、翌年に実施された調査では、48~50頭の個体を確認。

さらに、2014年2月から4月まで、同国立公園で実施された自動撮影カメラを使った調査では、2007年時の約2倍となる57頭を確認することができました。

1万枚の写真から個体数を特定

今回の調査は、「ヒョウの森国立公園」とロシア科学アカデミー極東支部が共同で実施し、アムールヒョウセンターとWWFロシアがサポートを行なう形で実施されました。

対象となったのは、3,800平方キロにおよび、アムールヒョウの主要な生息地。ここに、200機以上の調査用自動カメラを仕掛け、約1万枚の写真を撮影しました。

そして、画像に収められたアムールヒョウの個体の斑紋(毛皮の模様)を分析し、その模様の違いから、1頭1頭を峻別して全ての個体を識別し、57頭という頭数を確認しました。

この調査により、若い個体が縄張りを得ていることや、57頭の内少なくとも8~12頭が中国と隣接する地域に生息し、国境を越えて行き来している可能性があることもわかりました。

長年、極東ロシアでアムールヒョウやシベリアトラの調査保護に取り組んできた、WWFロシア・アムール支部代表のユーリ・ダーマンは、今回の結果について、「ロシア側と中国側を合わせて70頭のアムールヒョウが生息している可能性がある」と述べています。

また、極東ロシアでは、2015年2月1日から15日まで、雪上に残るシベリアトラの足跡調査が行なわれましたが、これと併せてアムールヒョウの足跡調査も実施されており、その結果も、自動カメラを使った調査の結果と併せ、検証に役立てられる予定です。

アムールヒョウの姿を捉えた自動撮影カメラ

撮影されたアムールヒョウ

国境を越えたアムールヒョウ保護の取り組み

今回の調査結果により、設立から3年目を迎えた「ヒョウの森国立公園」がヒョウの保護と調査において主体的な役割を果たし、効果的に機能していることが明らかになりました。

また、「ヒョウの森国立公園」と、国境を接する中国側の保護区との協力合意により、現在、アムールヒョウのモニタリングが共同で実施されています。

ロシア大統領府長官であり、アムールヒョウセンターの理事長を務めるセルゲイ・イワノフ氏は、「次なるステップは、ロシアと中国の国境にまたがる保護区を設立することだ」と述べています。

こうしたアムールヒョウの生息地の保護のために、ロシアと中国だけでなく、日本の消費者にもできることがあります。

極東ロシアの森で違法に伐採された木材は、中国で家具などに加工された後、日本へと輸出されている可能性があります。

アムールヒョウの生息を脅かすこうした違法伐採材を購入しないためには、持続可能な方法で生産された木材であることを証明する「FSC認証」が付いた木材製品を選ぶことが必要です。

WWFでは、ロシアでアムールヒョウの保護と調査を継続すると共に、日本の企業や消費者に対して環境に配慮した木材の調達・購買を働きかけていきます。

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