九州電力の再生可能エネルギー接続保留に対し声明を発表
2014/10/03
2014年9月、九州電力は「再生可能エネルギーによる発電設備の接続申し込みを、9月25日から数か月間にわたって管内全域で保留する」ことを発表しました。これは、2012年の「固定価格買取制度」の発足以来、導入が進んできた日本の再生可能な自然エネルギーの広がりに、波紋を投げかけるものです。WWFジャパンは10月1日、この問題についての懸念を声明として発表しました。
再生可能エネルギーの接続「保留」
2012年夏、太陽光や風力といった再生可能エネルギーによる発電電力量を、電力会社が一定の価格で20年間買い取る、再生可能エネルギーの補助金制度「固定価格買取制度」が発足しました。
この制度によって、発電にかかるコストを回収できる買取価格が設定されたことにより、日本の再生可能エネルギーの導入はようやく進んできました。
特に高い価格がつけられた太陽光発電は、比較的すぐに建設できることも相まって、多くの新規企業が参入。比較的土地の価格が安い北海道や九州などで、大規模なメガソーラーの建設が予定されています。
しかし、こうしたメガソーラーの固定価格買取制度への認定申し込みが増える中、再生可能エネルギーの広がりに波紋を投げる出来事が生じました。
2014年9月、九州電力が「再生可能エネルギーによる発電設備の接続申し込みを、9月25日から数か月間にわたって管内全域で保留する」ことを発表したのです。
これは、太陽光で発電を行なっても、電力会社がその発電電力を引き受けず、事実上、買い取らないことを意味します。
この発表には、東北電力や四国電力、北海道電力など他の電力会社も追随しており、同様の発表が今後、行なわれる可能性もあります。
九州電力の説明
九州電力は今回の発表の理由を「電力の需給バランスが崩れる可能性が生じたため」と説明しています。
電力とはそもそも、供給と需要をリアルタイムで一致させていかねばなりません。需要が多い季節や時間帯は発電量を増やし、逆の場合は発電量を抑える必要があります。
しかし、太陽光発電の容量が急増すると、春や秋の電気の需要が少ない時期の日中に、必要な電力容量を超える量に達してしまうことがあります。
このように電力の需要が供給を越えたり、その逆の現象が生じれば、停電などの事故が起きる可能性があるため、これを回避するために、供給の調整が難しい太陽光発電からの発電量の引き受けを一時停止する、というのが、九州電力の言い分です。
その上で九州電力は、「安定供給を維持しながら再生可能エネルギーを最大限導入できるように、全力を尽くす方針」を発表。
今後、「揚水発電の活用や火力の運用見直し、30日ルールの活用、地域間連系線の活用などの対策」を、数か月かけて検討するとしています。
一電力会社の判断を越えた決定
こうした九州電力の説明は、一見筋が通っているように見えます。
しかし、これは今後、日本がどれくらいの再生可能エネルギーを導入していけるのか、その可能量の検討にかかわる、非常に重大な問題です。
つまりこれは、国が政策の一環として検討すべきものであり、一電力会社に過ぎない九州電力の判断のみによって決定されるべきものではありません。
この問題について、政府も対応に乗り出し、9月30日、経済産業省の下に、有識者による検討委員会の設置が決まりました。
WWFジャパンは、この委員会の設置を歓迎するとともに、この場で検討するべき事項として6つのポイントを柱とした声明を、10月1日に発表しました。
WWFジャパンの声明 その6つのポイント(概要)
- 気象データに基づき、365日×1時間ごとの出力量のシミュレーションを行ない、電力の需給バランスを検証すること
- 現状で使用可能な揚水発電(*)を用いて、これをバッテリー代わりとして活用することで、再生可能エネルギーによる発電の変動を吸収すること
- 再生可能エネルギーによる発電量が多い時期や時間帯は、発電量の調整が可能であり、発電全体の主力となっている火力発電所の発電量を減らすことで、バランスをとること
- 気象予測を使い、天気によって変化する再生可能エネルギーの発電量(出力)を予測すること。また、その出力予測システムを用いた運用を行なうこと
- 日本の電力会社は、国内を9つの地域に分割(沖縄電力管内を除く)しているが、その間をつなぐ送電網は非常時以外には活用されていない。これを再生可能エネルギーのために日常的に活用すること
- 世界には再生可能エネルギーを大幅に使っている国がすでにたくさんある。それらの国に学び、再生可能エネルギーを含む電力の制御システムを作っていくこと
- 電気の余っている時間帯に水を上流のダムに汲み上げ、電気の足りない時間帯には下流のダムへ水を落として発電する方法。
【声明】電力会社の再生可能エネルギー接続保留に懸念あり
未来への「投資」を見据えた政策を
再生可能な自然エネルギーは、とかく発電量の不安定さとともに、普及のためのコストの高さが強調されがちです。
経産省の新エネルギー小委員会が提示している資料でも、「固定価格買取制度」による再生可能エネルギーへの賦課金のコストが2兆7,000億円にのぼり、一家庭あたりに追加される負担額も平均935円と示されました。
しかしこのコストは、石油や石炭、ウランなどを買うための、ただ出ていくだけの出費や負担ではありません。
ここには、気候変動の主因となっている二酸化炭素(CO2)の削減や、大気汚染防止のコストのみならず、国内の新たな雇用や経済への寄与につながる「投資」としての意味が含まれています。
さらに、資源の乏しい日本にとって、これらの再生可能エネルギーは、純粋な国産エネルギーであることから、エネルギー安全保障に資するものでもあります。
また、石炭や石油、天然ガスは、今後価格が高騰していくことが避けられませんが、その購入費用も削減することができます。
現状の電力料金は、燃料価格に連動して自動的に調整されており、そのために電気料金が国民の意思にかかわらず上がっています。
その上昇額は、震災前に比べて1000円を超えており、これが今後、どれくらい大きな負担になるか、その上限は見えていません。
日本では、再生可能エネルギーのマイナス面ばかりが指摘される一方で、こうした負担が増えることのリスクについては、まだ十分に知らされていません。
再生可能エネルギーへの投資を、単なる負担として示すのではなく、その可能性と利点を強く意識した政策の実現が今、求められています。
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