日本のマグロ流通加工業者が持続可能な資源の調達方針を発表


2013年12月26日、マグロの流通加工をいとなむ日本の企業が、マグロ資源の持続可能な利用をめざすための、水産物調達方針を発表しました。マグロの世界最大の市場を有する日本で、企業がこうした調達方針を出したことは、枯渇が懸念される、日本近海を含めた中西部太平洋のマグロ資源を保全し、持続可能な形で利用していく上での一歩となるものです。

いかにマグロを守ってゆくか?発表された調達方針

今回、水産物調達方針を発表したのは、マグロの産地那智勝浦を拠点とする、和歌山県那智勝浦町の株式会社ヤマサ脇口水産です。

同社は2013年12月26日に発表した水産物調達方針の中で、資源の枯渇が懸念されるマグロ類について、中長期的なヴィジョンを示したうえで、具体的なアクションプランを伴う調達方針を示しました。

その主な内容は以下の4点です。

1)違法な漁業由来の水産物の調達禁止
2)絶滅に瀕している水産物の調達禁止
3)生態系に悪影響を与える方法で生産された水産物の調達禁止
4)持続可能ではない手法で漁獲されたクロマグロの調達禁止

また、これらの方針を確実に達成するために、トレーサビリティや資源管理に関する情報を収集し、調達の定期的な評価を行なうとともに、NGOをはじめとする多様なステークホルダーとも連携することを謳っています。

さらに、持続可能な水産物の国際的なエコラベルであるMSC(海洋管理協議会)の認証製品を積極的に調達する旨も明記しており、同社が持続可能な水産物調達を目指すことを示した、より踏み込んだ内容となっています。

企業がになう、持続可能な漁業の推進における役割

ヤマサ脇口水産は、WWFが提案したマグロ漁業の改善と保全を支援し、けん引していくことを誓う署名に、2013年12月現在日本企業として唯一賛同している企業でもあります。

2013年12月2日~6日に、オーストラリアのケアンズで開催された、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)第10次会合の場でも、前年の2012年に続き、その宣誓が世界的に知られるところとなりました。

創業116年の老舗で、グループ全体の年商は10億円に上るという、ヤマサ脇口水産の脇口光太郎代表取締役は、今回の調達方針発表に関し、以下のように語っています。

「我々も鮪(まぐろ)も、子孫を残したい気持ちは一緒です。そういう想いの中から、私たち、脇口水産グループは鮪の幼魚は買わない。産卵中に捕獲された鮪や、資源を根絶やしにする様な効率だけの漁法で獲られた鮪は買わない。我々も生き、魚達も生きてゆける持続可能な漁法が、この水産大国日本でしっかりと根付いていって欲しい。消費者の方々にもただ美味しいだけ、健康にいい、だけでなくて、精神まで豊かになる様な鮪を良き規制の中で次世代に残していきたいと考えています」

また、WWFジャパンの水産プロジェクトリーダー山内愛子は、今回の調達方針の発表について、次のように評価しました。

「マグロ類の過剰利用が世界的な課題となっている中で、最大マーケット国である日本のマグロ取扱い業者が、持続可能な資源利用の危機感から高い目標を持った調達方針を掲げた意義は大きいといえます。

WWFジャパンは、ヤマサ脇口水産が国内のマグロ市場の将来を真摯に考え、今回の調達方針発表に至ったことに敬意を表するとともに、未来に繋がる水産ビジネスの牽引役として活躍してくれることを期待します」

WCPFCなどの国際的なマグロの資源管理の場で、直接交渉権を持つのは、加盟している各国政府の代表団です。しかしながら、実際にマグロ資源を商材として扱い、流通を担っているのは、世界中の企業であり、その企業が明確な意思をもってマグロの保全に貢献できる要素は少なくありません。

WWFでは引き続き、漁業に関連する企業による、MSC認証の取得など環境や資源に配慮した調達方針の策定を働きかけてゆきます。

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