ツキノワグマのフィールド・プロジェクト


日本国土のおよそ半分に生息するクマ。しかし、それぞれの地域により、クマの生息状況や行政の対応など、クマを取り巻く環境は大きく異なります。種としての「ツキノワグマ」は、環境省のレッドリストに指定されていませんが、全国で5つのツキノワグマの地域個体群が「絶滅のおそれがある地域個体群」として記載されています。そのうち4つは、かつて森林開発や害獣駆除などによってツキノワグマの生息数が減少してしまった西日本に集中しています。

フィールドと現地パートナー

WWFジャパンではフィールドプロジェクトを実施する上で、西日本に注目しました。
現在、四国は推定生息数が数十頭とされ、国内で最も絶滅が危惧されている地域です。一方、島根県をはじめとする西中国地域では、生息数・生息域ともに回復傾向にありますが、それに伴い人間とのトラブルが問題になっています。なお、四国山地、西中国地域のツキノワグマ共に「絶滅のおそれがある地域個体群」として記載されています。

フィールド活動には、実績があり信頼できる現地パートナーの存在が必要不可欠です。四国では四国自然史科学研究センターをパートナーに従来のプロジェクトのさらなる展開を、島根では島根県をパートナーに新たなプロジェクトを行なっています。

  • ※注:地域個体群とは、「ある一定範囲に生育・生息する生物一種の個体のまとまり」のこと。

四国でのフィールドプロジェクト

タイトル 四国地方ツキノワグマ地域個体群絶滅回避のための総合調査
実施概要 絶滅が危惧される四国のツキノワグマについて、生態や生息地の食物資源量などについて調査を行なう。その結果得られる科学的情報をもとに、国や県などの関係機関に具体的な提案を行ない、絶滅の回避に向けた効果的な保護管理の実現を働きかける。
パートナー 認定NPO法人四国自然史科学研究センター
実施場所 四国山地、剣山(つるぎさん)山系(徳島県および高知県)
実施期間 2012年7月から2016年6月までの4年間を予定

パートナーからのメッセージ

四国のツキノワグマは、絶滅の瀬戸際にいます。
野生動物の保護には、科学的情報はもちろんのこと、市民からの声がとても大きな推進力になります。
四国のクマが今後も生息していけるよう、活動を進めていきます。是非、四国のクマに興味を持っていただき、あたたかいご支援をいただけたら幸いです。

認定NPO法人四国自然史科学研究センター 山田孝樹さん

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島根でのフィールドプロジェクト

タイトル クマをはじめとする野生動物とのあつれき軽減へ向けての地域一体となった取り組み -島根県の中山間地域※注が抱える諸問題に着目して
実施概要 島根県ではかつて減少したツキノワグマの生息数・生息域ともに回復傾向にあるが、それに伴い人間とのトラブルが問題になっている。過疎化や少子高齢化など中山間地域が抱えるさまざまな問題に考慮しながら、地域一体となってクマをはじめとする野生動物とのトラブル軽減に取り組む。
パートナー 島根県(島根県中山間地域研究センターを代表機関として)
実施場所 浜田市田橋町・横山町、および益田市匹見町
実施期間 2012年7月から2016年6月までの4年間を予定

  • ※注:中山間地域とは、一般的に「平野の周辺部から山間部に至る、まとまった耕地が少ない地域」とされる。

パートナーからのメッセージ

被害を防ぐことができるのは行政や研究者ではありません。農家のみなさんこそが被害を防ぐ実力者であり,集落の方々こそが「集落ぐるみでの被害対策」の 主役です。 全国に先行して集落の小規模・高齢化が進む本県の中山間地域が元気になるように頑張ります。

島根県中山間地域研究センター 澤田誠吾さん

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