第16回ワシントン条約会議はじまる
2013/03/04
2013年3月3日から14日までの日程で、タイのバンコクにて第16回ワシントン条約(CITES)締約国会議が開催されています。今回の会議では、70あまりの附属書の改正提案について検討が行なわれ、その中には日本の固有種リュウキュウヤマガメについての提案も含まれています。また、近年アフリカでは象牙を狙ったゾウの密猟が深刻化していることから、密猟を助長する密輸の取り締まりについても議論されます。
世界の野生動植物を過剰な取引から守る会議
ワシントン条約は、正式名称を「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」といい、野生動植物が国際取引によって過度に利用されるのを防ぐことを目的とした条約です。
1973年に米国のワシントンにおいて採択され、 1975年に発効しました。
ワシントン条約の締約国会議では、実際に国際取引を禁止や規制の対象にする動植物が決められます。その結果によって、輸出入や海外から持ち込む際にこれまで自由であった動物や植物の製品も、許可が必要となったり、まったく輸出入ができなくなったりします。
条約の対象となる野生動植物は、 附属書1、2、3のいずれかに掲載され、各附属書ごとに規制が定められます。
今回の会議では、各国より70の附属書の改正提案が提出されました。その中には日本の固有種リュウキュウヤマガメについての掲載提案も含まれています。
附属書改正が提案されている動植物(一部)
附属書1への掲載が検討される動植物(すべて附属書2→附属書1)
ホッキョクグマ、アフリカマナティ、ビルマホシガメ、ノコギリエイ など9種
附属書2への掲載が検討される動植物
オニイトマキエイ属全種、シュモクザメ類、ヨゴレ、ニシネズミザメ、多数のイシガメ科/スッポン科のカメ、多数のマダガスカルの植物種、リュウキュウヤマガメ(日本政府が提案) など
規制を緩くする提案が出ている野生生物(ダウンリスティング)
ビクーニャ、数種のキジ科の鳥、アメリカワニ、イリエワニ、オーストラリアの哺乳類6種、オーストラリアの両生類2種 など
密猟を防ぐための国際協力を
また、今回のワシントン条約会議に際しては、近年、特にアフリカでゾウやサイの密猟が激化していることから、密輸の取り締まり強化についても、検討が進められています。
アフリカで密猟されたゾウの象牙が、最終的に消費されるのはアジアです。現在、象牙を含むゾウの身体や生きた個体は、国際間の取引が厳しく規制されていますが、それでも違法に象牙を取引する「密輸」が絶えません。
そして、そうした象牙に対する需要と、活発な密輸が、密猟をさらに深刻化させる一因になっているとみられています。
逆に、各国が協力して、密輸を厳しく取り締まることができれば、密猟された象牙も行く先がなくなり、ゾウなどの野生動物を保護することにつながります。
今回の会議が開催されるタイは、国内にも多くのアジアゾウがおり、その象牙が合法的に売買されてきました。しかし、こうした国産の象牙を合法的に売買できる国々 では、国外から密輸された象牙と、自国産の象牙の区別がつけにくい場合が多く、密猟象牙のブラックマーケットになっている可能性が指摘されています。
WWFと、野生生物の取引を監視する「トラフィック」では、今回の会議に際して、タイ政府にゾウ保護のため、象牙の国内取引をやめるよう求める署名活動を展開。すでに200を超える国から、50万筆を越える署名を集め、2月27日には、国内取引禁止の請願とともに、この署名をタイのインラック首相に手渡しました。
この署名活動は、会議最終日の3月14日まで続けられ、タイ国政府に再度提出される予定です。
国際的な関心が集まる中で、密輸問題に対して各国が今後、どう協力し、取り組んでゆくのか。その姿勢が問われる会議となります。