過剰漁獲をやめ、マグロ資源の持続可能な利用を求める企業の署名
2012/12/28
2012年12月に開催されたWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の年次会合は、参加各国の十分な合意と成果を見ないまま閉会しました。メバチ、ビンナガなどマグロ類の資源枯渇が懸念される中、参加各国の消極的な姿勢が目立っています。しかし一方で、同会議の場では、これらのマグロをビジネスで扱う一部の企業が、持続可能なマグロ資源の利用を促す署名に賛同。責任あるマグロの流通を実現する意思を表明しています。
危惧されるマグロ資源のゆくえ
2012年12月2日から6日まで、フィリピンのマニラで開催されたWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)第9回年次会合では、危機的な資源の減少が懸念されているマグロの一種メバチの資源保護について、各国の採択と合意が期待されていました。
しかし、WCPFCの加盟各国は積極的な姿勢を見せず、この海域で最も重要な漁獲対象である3種のマグロ、メバチ、ビンナガ、太平洋クロマグロ(本まぐろ)の、より有効な資源管理のための措置については、何も合意されず、会議は失敗に終わりました。
この結果について、WWFは海の生物多様性への悪影響と、マグロの資源問題の深刻化を招く恐れがあることを指摘。
特にWCPFCに対しては、マグロ類の資源を管理する機関として、その責任を果たすことを強く要望し、適切な管理基準値と漁獲管理方策の採択を求めてきました(詳しくは、ファクトシートをご参照ください)。
寄せられた世界の企業の賛同
こうした実効性のある管理措置の導入を申し入れたWWFの提言に対し、今回のWCPFC会議では、世界中の多くの企業が賛同の意を表しました。
こうした環境や資源に対して意識を持つ企業が、持続可能な形で調達される水産物を扱うためには、現場の漁業における管理基準値と漁獲管理方策が、絶対に必要な条件となるからです。
今回、WCPFCの第9次年次会合に合わせ、WWFと、ビジネスでマグロ資源にかかわりを持つ多数の企業・団体は、十分に計画立案されたマグロ漁業の改善と保全を支援し、けん引していくことを誓う署名に賛同しました。
参加したのは、マグロ資源のバイヤー、漁業者、加工業者、そして貿易関係者など。西部太平洋地域のステークホルダーだけでなく、欧米やオーストラリアの企業も参加しました。
そして、今回は日本企業として初めて、株式会社ヤマサ脇口水産が、WWFの呼びかけるこうした国際的な場での署名に賛同。持続可能なマグロ漁業の支援と、その責任ある調達を、自ら約束しました。
持続可能な漁業の拡大をめざして
今回、マグロビジネスに関連する企業や団体が、WCPFCに対し、署名を通じて求めているのは、世界のマグロ流通が責任ある形で実現することにより、沿岸地域の人々の暮らしを守り、環境への負荷を最小限にとどめるよう、改善を実施することです。
また、こうした持続可能な資源利用や、そうして生産される高品質のマグロの流通を実現する上で、大きな力となるのは、MSC(海洋管理協議会)による漁業認証です。
MSC認証は海の環境や資源に配慮して漁業やその産品、サプライチェーンを認証する、現在、世界で最も信頼度の高い認証制度です。
WWFでも、MSCを設立当初から支援し、過剰な漁獲をなくし、海の生物多様性と、健全な漁業資源状態の保全を目指してきました。WWFはこれからも、太平洋をはじめとする世界のマグロ漁業がMSC認証を取得することを推奨すると共に、意識のある企業とも連携し、持続可能なサプライチェーンが構築されることを求めてゆきます。