日本の生物多様性を守ろう!「種の保存法」の抜本改正を
2012/07/13
2012年7月13日、WWFジャパンは環境大臣宛てに、「種の保存法」の抜本改正を求める要望書を提出しました。これは、生物多様性の保全を担う重要な法制度の一つですが、過去20年間、実質的な法改正が行なわれてこなかったため、拡大しつつある環境問題に対応しきれない、古い内容になっています。WWFでは今回の意見書の中で、6つの重要な改善のポイントを指摘。2010年の「愛知目標」にも合致した、新しい法制度の実現を求めています。
環境大臣に「種の保存法」抜本改正の要望書を提出
2010年に名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(CBD-COP10) で、愛知目標が合意されました。
そのひとつに、「2020 年までに、既知の絶滅危惧種の絶滅及び減少が防止され、また特に減少している種に対する保全状況の維持や改善が達成される」があります。
しかし、そのための具体的な施策は、CBD-COP10後、ほとんど進められていないのが現状です。
WWFジャパンでは、そうした状況の改善を図る手立ての一つとして、「絶滅のおそれのある野生動植物の種(しゅ)の保存に関する法律(種の保存法)」の改正を求めてきました。
これは、絶滅のおそれのある野生動植物を保護することで、自然環境を保全することを目的としたもので、1992年6月に制定された法律です。
久しく、日本の生物多様性保全を担う重要な法制度の一つとして施行されてきましたが、現在までのおよそ20年もの間、大きな法改正がほとんど行なわれませんでした。このため、拡大を続けるさまざまな環境問題に、対応しきれない内容となっています。
それにもかかわらず、改善の動きは見られません。
環境省は目下、生物多様性国家戦略の改定を進めていますが、先日発表された「生物多様性国家戦略(案)パブリックコメント版」の愛知目標の達成に向けたロードマップ(素案)にも、「種の保存法」改正に向けた方針は記述されていません。
そこで、WWFジャパンとトラフィックでは2012年7月13日、かねてから問題を指摘してきた点とともに、以下のような内容で「種の保存法」の抜本的改正を求めました。
改正のポイント
1.抜本的な改正の趣旨を示す前文を追加する。
2.目的条項に、「生物の多様性の確保」「予防的アプローチ」の文言を入れる。
3.法律名を、「種の保全」にあらため、「生息域の維持回復」を追加する。
4.第3条(財産権の尊重等)を削除する。
5.希少種の保護とともに生息地の回復施策を盛り込む。
6.野生動植物の罰則の強化などの不正取引防止策を改善、強化する。
→「意見書」の全文はこちら
提案概略図
生物多様性と地球の豊かさを示す「生きている地球指数」は、1970年から2008年までに世界全体で28%の劣化傾向を示しています (WWF Living Planet Report, 2012)。
今、対策を講じなければ、生物多様性と生物多様性が支える生態系サービスには甚大な変化が生じ、回復が困難になり、将来世代に引き継げなくなります。
【関連情報】ぜひアクションを!パブリックコメントを出してください
環境省は生物多様性国家戦略の改定案について広く国民の意見を聴くため、2012年7月6日(金)から8月5日(日)までの間、意見募集(パブリックコメント)を行なっています。
WWFジャパンとトラフィックの要望書を参考にして、ぜひ皆さんからも、種の保存法抜本改正の意見をパブリックコメントとして提出してください。
こちらのような文言を送付いただくだけでも結構です。「野生動植物の保全により生物多様性を確保するため、種の保存法の抜本改正についてWWFジャパンの要望書を参考にしてください」。よろしくお願いいたします。