ユキヒョウ調査で見つかったブータンの野生生物の楽園


ブータンでもっとも新しい自然保護区「ワンチュク国立公園」での調査の結果、WWFとブータンの生物学者は、ここで初めて、ユキヒョウの生息を確認しました。調査では、他にも多くの野生生物が生息していることを確認。この国立公園が、ヒマラヤの自然保護を推進する上で、大きな力を発揮する期待が高まっています。

ユキヒョウの「ホットスポット」を探せ

WWFは2012年2月、2008年に設立された、ブータンで最も新しい国立公園「ワンチュク国立公園」での、ユキヒョウの調査結果を発表しました。

WWFとブータン政府が協力して実施してきた自動カメラを使ったこの調査では、ユキヒョウをはじめ、オオカミ、ドール、アカギツネ、ナキウサギ、ヒマラヤカモシカ、ヒマラヤジャコウジカ、バーラル、さらに多数の鳥類など、さまざまな野生動物の映像や画像およそ1万点を撮影。

自動カメラは、ユキヒョウの「ホットスポット(重要な生息地)」を探すために設置されたものでしたが、初めてのユキヒョウの姿の確認を含め、その調査結果は関係者の予想を超えたものでした。調査を主導したWWFのリンジャン・シェレスタ博士も「驚異的」と驚きを隠しません。

ヒマラヤの自然を守る鍵

そうした中での調査の結果は、そのユキヒョウの保護に対する前進をもたらすだけでなく、ヒマラヤの自然の保全に大きな一歩をもたらすものとしても、大きな期待をもたらしました。

2008年にブータンで設立され、今回調査の現場となった、ワンチュク国立公園は、それ自体が広さ4,919平方キロという広大な自然保護区ですが、同時に、ブータン東部のバンデリン野生生物保護区と、西部のジグメ・ドルジ国立公園という、二つの保護エリアを結ぶ「回廊(コリドー)」の役割を課されています。

そして、この3つの保護区が連結したことにより、ブータン北部、ヒマラヤ山脈側の国境一帯は、全域が保護区となりました。

今回のユキヒョウ調査は、この新しいワンチュク国立公園が、優先的に保全すべき保護区として、十分に機能することを期待させる結果をもたらすことになったのです。

ヒマラヤの自然を未来に

ブータンでは現在、国土の51%以上が、何らかの保護地域に指定されており、それぞれの保護区を「回廊」で結ぶ試みが進められています。

それぞれの保護区では、開発と保全、人間と野生生物の競合が絶えず起きているほか、近年は、地球温暖化も大きな脅威になっていますが、全国的な環境保全に努力するブータン政府の努力は、意欲的であり、高い評価に値するものといえるでしょう。

WWFはこうしたブータン政府の取り組みを長年にわたって支援し、ワンチュク国立公園についても、保護区として成立する前の2005年から、その共同管理や調査に携わってきました。

ヒマラヤの景観を未来に引き継ぐために、WWFは今後も野生生物の調査と、保護区の管理や、地域コミュニティーへの支援、さらに地球規模での温暖化に対する取り組みを続けてゆきます。

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調査で撮影されたユキヒョウ。ヒマラヤと中央アジアの高山帯に、4,500~7,500頭が生息する。生息地の開発や密猟、家畜に被害を与える害獣としての駆除、さらに温暖化などにより、絶滅の危機が高まっている。

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同じく調査で撮影されたバーラル。ワンチュク国立公園では、これまでに244種の維管束植物、23種の哺乳類、134種の鳥類が確認されている。

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ジャコウジカ

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