南アフリカのサイの密猟 前年を上回る規模に
2012/02/01
2011年の1年間に、南アフリカ共和国内で密猟されたサイの頭数が、前年の2010年の数を上回ったことが明らかになりました。2008年から見られ始めたこの密猟の増加傾向。背景にあるのは、アフリカではなく、アジアにおけるサイの「角」に対する需要です。現地での密猟対策の推進とともに、サイの「角」を消費する国での、厳しい取引の取り締まりが今、求められています。
南アフリカで増え続けるサイの密猟
アフリカ大陸に生息する2種のサイ、クロサイとシロサイ。この2種は過去に、東アフリカや中央アフリカを中心とした地域で、高値で売買される角を狙われ、激しく密猟された歴史がありました。
その中で、南アフリカ共和国は、近年まで比較的に密猟が少なく、サイにとって貴重な生息地となってきました。現在、アフリカに生息するサイの個体数の8割が、この一国に集中しています。
しかし、ここ数年の間に、南アフリカでは密猟が増加。2008年には83頭、翌2009年には122頭が密猟され、2010年は333頭とその数が増え続けてきました。
そして2011年には、10カ月が過ぎた時点で密猟されたサイが340頭を越え、年末までには、さらに100頭を加えた448頭が犠牲になったと報告されています。
この448頭の中には、世界に4,800頭ほどしか生き残っていないクロサイも、19頭含まれていました。
クルーガー国立公園にも危機が
また、448頭のうち、252頭はクルーガー国立公園で密猟されたものでした。
クルーガーは南アフリカを代表する大規模な保護区の一つで、サイにとっても長年重要な生息地となってきた場所です。
ここでは、2011年の年があけた最初の1週間で、早くも8頭のサイが新たに密猟の犠牲になりました。
WWF南アフリカによれば、こうしたサイの密猟は、国際的な犯罪組織によって行なわれているとされています。これが、管理されていた保護区にまで脅威を及ぼしている点は、新しく、また大きな問題といえます。
南アフリカ政府当局は、密猟を取締る努力を続けており、2010年には165件、2011年には232件の密猟を摘発しました。しかし、密猟されるサイの数は増えており、問題も深刻さを増しています。
この背景にあるのは、「サイの角」に対する、海外の需要です。
ベトナムでの需要とワシントン条約
サイの密猟は、古くから薬や強壮剤になるとされてきた「角」を狙って行なわれてきました。
実際に、現在南アフリカで密猟されているサイの角も、ベトナムをはじめとする海外のマーケットに密輸されています。
トラフィック(野生生物の取引をモニタリングしているWWFとIUCNの共同プログラム)のトム・ミリケンは、「ベトナムの富裕層やエリートの人々の間で、サイの角が高価な薬として、贈り物にされている」といいます。
「ですが、二日酔いを覚ますために、絶滅の危機にあるサイを殺すのは、犯罪です」
野生生物の国際取引を規制する「ワシントン条約(CITES)」も、サイの危機と密猟の根源には、このベトナムの需要があることを認めており、ベトナム政府に対して、サイの角などの違法な取引を厳しく規制するよう求めてきました。
しかし、ベトナム政府は今のところ、この条約事務局の要請に十分に応えることができていません。
密猟を無くすために
WWFとトラフィックでは、ベトナム政府に対し、サイ角の取引に対する厳しい取締りの施行を求める一方、密猟が起きている現地の南アフリカで、保護区のレンジャーや捜査官などに対し、支援活動を行なっています。
とりわけトラフィックは、南アフリカとベトナムの両国政府が、協力して密猟と違法取引を取り締まるための約束を取り交わすよう、働きかけを行なってきました。
この約束には、まだサインがされていませんが、実現すれば今後、二つの現場を結んだ、より充実した対策が可能になると期待されます。