「リオ+20」の成果文書素案(ゼロドラフト)への懸念


2012年6月、ブラジルのリオデジャネイロにおいて、「国連持続可能な開発会議(通称リオ+20)」が開催されます。1月10日、リオ+20事務局は、各国政府やその他団体などからの提案をもとに、会議の基礎となる成果文書素案(ゼロドラフト)を発表しました。WWFはこの内容の一部に対し、水環境の保全をはじめとする取り組みのあり方について、懸念される点を指摘・発表しました。

ゼロドラフトの懸念点

リオ+20、この会議は1992年の「地球サミット」から20年の節目に開催され、「持続可能な開発の推進」に新たな息吹を吹き込むべき重要な会議として注目されています。

しかし、公開されたゼロドラフト「The Future We Want(私たちが望む未来)」では、貧困の撲滅、食糧安全保障、持続可能な開発の必要性については認識されている一方で、今後10年間に、世界的な食糧、水、エネルギーの問題を解決する具体的な手法については、ほとんど触れられていないことがわかりました。

最初の段階から、水問題については、単に衛生施設普及へのコミットメントを再確認するだけにとどまっており、淡水の問題は触れられていません。

また、こうした問題の解決には、各国の都合で引かれた政治的な「境界線」を超えて、自然のつながりを視野に入れた「水系の管理」が必要ですが、これも具体的な対策が抜けています。

WWFは国境を超えた取り組みとして、淡水生態系の保全や復元、水源としての役割を果たす森林の保全、地球温暖化の影響による水資源への深刻な悪影響に対策を施すか、手法についての言及が必要と考えています。

その他、WWFが指摘する懸念事項は次の通りです。

  • 国ごとの「自主的な国ごとのコミットメント」では法的拘束力がない。そのため、各国が目標を設定することや期間内に行動することは困難となることが予想される。各国政府は、目標・実施期間・資金についての合意が必要。
  • グリーン経済の発展に関する文章には、国民経済計算、税制度、認証制度に社会的・環境的コストを計算にいれることが必要。
  • 食糧、水、エネルギー安全保障への取り組みに対する提案では、一定の目標と確固たる実施策、資金提供の合意が必要。
  • 食糧、水、エネルギーの供給を下支えしている生態系サービスと、それらに非常に大きな影響を及ぼす気候変動を文書案は考慮していない。
  • 森林消失抑止の目標や、効果的な水管理目標など、提案の多くに明確な目標と期限が記載されていない。

歓迎すべき点と今後の展開

一方、持続可能な海洋資源の管理や、グリーン経済を発展させるためには、政府と産業界のための枠組みが必要であること、また、低炭素社会への移行、環境に悪影響を及ぼす補助金制度の廃止などを含め、重要な課題が認知されたことについては、歓迎すべき点といえます。

今回公開された、リオ+20のゼロドラフトは、2012年1月25~27日に予定されている国際会議で議論される予定です。

事務局ではセクション1と2については1月23日までに、3~5については2月17日までにコメントを提出するよう加盟国に通達しており、WWFも各国関係者に対する働きかけを続けていく予定です。

地球の生態系の保全に向けた、より積極的な合意が世界のリーダーたちによって交わされるように。6月に向けた動きが、活発になり始めています。

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