APP社の「環境広告」はグリーンウォッシュ


かつて豊かな熱帯林に覆われていたインドネシア、スマトラ島。しかし、今この貴重な森は大手製紙企業の一つ、APP(アジア・パルプ・アンド・ペーパー)社らによる原料調達のために伐採が進み、急激に失われています。ところがその一方で、APP社は自社の環境への貢献を主張し続けています。スマトラの森林減少・違法伐採を監視するNGO、アイズ・オン・ザ・フォレスト(Eyes on the Forest)は、APP社の「環境広告」の裏側を明かす報告書、「APP社、グリーンウォッシュの裏側『The Truth Behind APP’s Greenwash』」を発表しました 。

熱帯林を脅かす製紙会社の原料調達

貴重な熱帯林が今も残るインドネシアのスマトラ島。世界に誇る豊かな生物多様性を持つこの森は、そこに暮らす人々の生活の基盤となるとともに、スマトラトラ、スマトラゾウなどをはじめとする希少な野生生物のすみかともなっています。

ところが、この豊かな森は1980年代頃から製紙企業の原料調達地として、伐採が進められたことなどが原因で急激に減少し、1985年から2009年までの約25年間で、森林面積は半分にまで失われました。

APP社は1984年の操業開始以来、紙の原料となるパルプ生産のために自然林を伐採してきました。面積でいえば200万ヘクタール、これは四国の面積を上回る広さです。

WWFは、スマトラの現地で、違法な森林伐採などを監視する活動に取り組むNGOの連合体、アイズ・オン・ザ・フォレストと協力し、これまでAPP社に対し貴重な自然林の伐採をこれ以上行なわないこと、また大量の温室効果ガスの排出の原因となる泥炭地からの排水を行なわないことを求めてきました。

しかし、APP社やその関連会社による自然林の伐採、泥炭地からの排水は今も続いています。こうした場所や、その周辺地の中には、個体数400頭前後といわれる希少なスマトラトラの生息地や、スマトラオランウータンの野生復帰プロジェクトが世界で唯一成功した森もあります。

食い違う、「環境広告」と現実

その一方でAPP社は、インドネシア国内はもちろん、ヨーロッパやアメリカ、中国などのアジアなど世界中で、熱心に自社の環境への取り組みをウェブサイトやパンフレット、新聞広告、テレビコマーシャルなどを通じて行なっています。

これらの動きに対し、アイズ・オン・ザ・フォレストは今回新たに発表した報告書の中で、そのようなAPP社による環境保全活動のほとんどが、同社の操業規模が与える環境負荷と比較して取るに足らないものであること、さらに自ら保全を約束したはずのトラの生息地でさえも、今や工場の原料供給を満たすための伐採が始められているという事実を指摘。

APP社による多くの「環境広告」は、環境に明らかな悪影響を及ぼしている企業が、他のCSR(社会貢献活動)などをアピールすることで、その行為を隠そうとする「グリーンウォッシュ」であると主張しています。

責任ある調達が森を守る

WWFジャパンは、世界各国のWWFと協力し、これ以上、森林破壊を拡大させないよう、アイズ・オン・ザ・フォレストなど現地のNGOと協力、そして活動を支援してきました。

また、日本国内の購入者や、紙製品を扱う企業に対しても「責任ある調達」が行えるように「調達方針」の策定を働きかけています。

これは、ビジネスとして大量のコピー用紙などの紙製品を取り扱う企業だけに限りません。なぜなら紙は、ビジネスや日常の生活で欠くことのできないものだからです。

適正な「調達方針」を策定し、一見同じに見える紙製品を、その方針に基づき選別することをWWFは推奨しています。そうすることにより、環境への配慮が十分ではない企業や製品を排除し、森林を守ることにつながるからです。

 

共同記者発表資料

APP社による違法伐採の現場

トラのサンクチュアリ内で行なわれた伐採の跡

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泥炭林は地中に大量の炭素を含む湿地。そこでの伐採は、まず水路を引いて排水し、土壌を乾燥させてから行なう。泥炭林の開発は、大量の炭素が空気中に放出するため、気候変動問題の観点からも問題視されている

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森林破壊の現場。これもトラのサンクチュアリ内

 

 

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EoFの最新報告書
「APP社のグリーンウォッシュの裏側
『The truth behind APP's greenwash』」
PDF形式:英語   PDF形式:日本語

アイズ・オン・ザ・フォレストについて

アイズ・オン・ザ・フォレストは、スマトラ島リアウ州を中心に森林伐採を監視するNGOの連合体。WWFジャパンは、2004年の結成当初から活動の支援を行なっています。森林被覆状況、保護区の位置、野生生物の行動範囲、伐採権所有者などから、違法伐採や保護価値の高い森林の伐採とそれに関わる組織の情報まで、幅広い発信を行なっています。

 

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